far-fetched: それはちょっと無理がない?
日本の首都であり、いまや世界中から観光客やワーキング・ホリデーを利用した滞在者が集まる国際的最先端の大都市東京。東京にお住まいの方ならここ5年ほどの変わりぶりはよくご存じなのではないでしょうか。筆者は生まれも育ちも東京ですが、昔は欧米人の友達や彼氏彼女をつれている日本人を目にしては、そのころから英会話を勉強していた筆者はうらやんだものでした。「はー、わたしも外国人の友達がいればなあ。」しかし未来はわからないもので、いまでは東京の国際化とともに筆者も東京住まいの外国人の友人が何人もできました。
ところで、こうした外国人の友人たちには(もしかしたら筆者も含むかもしれませんが)ある共通点があったのです。それは、ずばり(程度の差こそありますが)アニメやマンガ、ゲームなどといったコンテンツのファン、いわゆるオタクというやつなのです。いえいえ、卑下してはいけません。いまやそうしたコンテンツは日本が誇るすばらしい文化のひとつなのですから。おっと、これでは話が脱線してしまいますね。本題はここからです。
それは筆者がそのオタクの外国人の友人のひとり(カリフォルニア出身のアメリカ人)と遊んでいたときでした。筆者とその友人はゲームセンターの格闘ゲームを遊んでみることにしました。みなさんご存知かもしれませんが、格闘ゲームは全3戦で2勝を先取した人が勝ちとなります。そのとき、1戦目こそ筆者が得意な必殺コンボを決めて勝ったのですが、2戦目、3戦目はなぜかうまくコンボに入れず、筆者は友人に負けてしまいました。そこで筆者が悔し紛れに「These buttons are broken, because... このボタンが壊れてて・・・」などと負け惜しみを口にしたところ、その友人は勝ち誇った面でこう言い放ちました。
That's too far-fetched.
そりゃこじつけすぎるよ。
筆者はその言葉の意味がわからなかったので、スマホで入力してもらって意味を教えてもらいました。それは「ありえない」「こじつけ」という意味のようでした。筆者もスマホの携帯電子辞書アプリで確認してみると、「かけ離れた、結びつかない、ありえない、無理な、こじつけの」といった定義でした。思わず「へぇー」っと感心してしまいました。だってこの単語を見てみてください。far-fetchedです。ごらんの通りfarとfetchedをハイフンで結んだ二重語ですね。そしてfarは「遠い」、fetchは「とってくる」という意味ですね。そしてfetchを過去分詞化してfetchedにすれば「とってこられた」という意味になります。それにfarをくっつけて「遠くからとってきた」という意味ができます。ここからネイティブスピーカーは感覚的に「かけ離れたところから無理やりとってきた」というニュアンスを与え、「かけ離れた、ありえない、こじつけの」という意味で使っているのです。
和を重んじる日本人にぴったりの便利な用例
筆者が「へぇー」と感心していると、友人は「これはよく使う言葉で便利だから覚えておいた方がいいよ」とアドバイスしてくれました。たとえば、ある日友人が「今日、彼女と目が合ったんだけど、彼女が笑顔でうなずいてくれたんだ。彼女はきっとぼくに気があるに違いない」なんて浮かれ顔で言い出したとき、
That sounds far-fetched.
それはちょっと大げさじゃないかなあ。
と返したり、ゲームに負けた友人が「そっちのルールではありなのかもしれないけど、うちのローカルルールじゃそれは反則だ。だからぼくの勝ちだ」などと無理やりこじつけてゴネたりしたとき、
This explanation is far-fetched.
その理屈はおかしいんじゃないかな。
と返したりといった具合で使うそうです。
ゲーム機の故障を言い訳にした筆者に対して
No way, you're loser.
ばかいうな、負け犬が。
と厳しく勝ち誇ったり、彼女ができたと浮かれているのんきな友人に
That's impossible.
そりゃありえないよ。
と真っ向から否定したり、ルールをこねくりまわしてゴネてる友人に
Can't you read the rulebook?
ルールブックも読めないの?
などと相手の痛いところを率直につくよりも、
That's far-fetched.
それは無理があるよ。
とやんわりと否定してあげた方が丸く収まりそうですよね。みなさんも「英語のネイティブスピーカーはみんな直情的でなんでも物事をズバズバ言うものだ」というようなイメージがありませんでしたか? 筆者もそういうひとりだったので、これを聞いたときはとても感心し、それからはなにか反論したいときによく使うようになりました。なんとも日本人的な感性にあった英語だと思いませんか?
カモネギ=far-fetched?
さて、筆者がひとしきり感心したところ、その友人が「ところで・・・」とおもむろにカバンから携帯ゲーム機を取り出しはじめました。筆者が「???」となっていると、ゲームを立ち上げ、画面を見せてきました。それはあの『ポケモン』の英語版でした。画面に映っていたのはモンスター図鑑。そしてそのモンスターはカモネギ。筆者がなおも「???」と混乱していると、友人はカモネギの名前を指さしました。するとなんと、その名前はFar-fetchedとなっていたのです! 友人は筆者に聞きます。「なんでこのポケモン、Far-fetchedって名前なの? 日本語だとなんていうの?」そこで筆者は「カモネギ」という名を教え、そのことばの由来を教えました。すると友人は
Hahaha, that's exactly too far-fetched!
アハハ、そりゃまさに無理やりすぎるよ!
と大爆笑。どうやら筆者も友人を「へぇー」と感心させることができたようです。