恐らく日本人ほど表現が曖昧で返事もあやふや、ときには人の心を傷つけないことが目的とする「やんわりとした断り方」などを使う民族はいないでしょう。
「考えておきます」や「難しいかもしれません」などと返事をされた場合、相手は何となくその場の雰囲気などで相手が本当に考えてくれるのかやんわりお断りしようとしているのかを判断し、あまり追及しなくなるのが定番です。
Contents
you know .. 言わなくても分かるでしょ?
「言わなくても分かるでしょ」と言った暗黙了解の文化があるからと言えます。それに比べアメリカ人は白黒はっきりしていて曖昧な表現を嫌い、断るときにはきっぱり断り、断られた方もさっぱりとその返事を受け入れる、というのが一般的なパターンです。しかしアメリカ人もときには面倒なときなどに少し文章の後半をぼやかすような表現をして自分のエネルギーをセーブしようとするときがあるのです。例えばの話ですが、
The restaurant is pretty expensive and meant for important occasions, so bringing your baby along would be, well, you know...
このレストランは結構値段も高く大事な行事などに使われるような場所なので、赤ちゃん連れで来るのはちょっと、ね...
この場合、「you know」とは「ちょっとね」の意味に当てはまり、直訳すると「あなた分かるよね」となりますが、正に言わなくても分かることを求めているワンフレーズです
高級なレストランに赤ちゃん連れで行こうとしている相手を止めようとする際、「赤ちゃん連れて行くのは適切ではない」とまで言わなくても済むように「you know」というフレーズの力を借りてそれを省略しているわけです。
もちろんこれは正式な書き言葉などで使われるものではなく、カジュアルな会話でのみ使われるフレーズですが、実に頻繁に使われます。英語は日本語や中国語と違い、漢字や単語を短く並べるだけでできあがるものではなく、きっちりとした文章で言いたいことを完結したい場合はそれなりに長くなる言葉であるため、相手の気持ちを傷付けたくない場合だけではなく、ただ単に面倒でフルに文章を考えて発したくない場合、要するに少し怠けたい場合には文章を途中まで言った後に「you know...」と最後につけて相手に「言わなくても分かってくれるよね?」という表情でアイコンタクトをする場合が多いです。
正式な文章で使われる表現ではないため、一般的に「you know」という言葉を見かける場合は以下のような文章が多いです。
I am certain you know the basics about Japan.
君が日本に関しての基本的なことは全部知っていることは確信あるよ。
これは文章通り「you know」、「あなたは知っている」という意味そのままです。正式な文章では、必ず文章の中央に表れる二つの単語であり、冒頭や最後に表れることはありません。冒頭で表れる場合もやはりカジュアルな会話の中でのみのこととなります。以下のような例があります。
You know that new restaurant near the park?
公園の近くにできた新しいレストラン知ってる?
この場合も「you know」の意味は辞書通り「あなたは知っている」ですが、本来会話ではなく正式な書き言葉の場合は「Do you know that new restaurant near the park?」と書かなければなりません。文法的に「You know」と始める文章は成り立たないからです。小説の場合は別ではありますが。
少しいい加減な気持ちで投げ捨てるような言い方にも?疑問形で終わる「...you know?」
最後にですが、文章の最後に「you know」が来る場合、形として質問の「?」マークで終わる場合は、前述した赤ちゃん連れでのレストランの例とは微妙にニュアンスが異なることがあります。「分かってくれるよね」というより「分かる?」と、求めているものは暗黙の了解でありながらも「まさか分からなかったりしないよね?」という気持ちが少し含まれており、ネガティブなシチュエーションで用いられることもあります。
Bringing your baby along would not be a good idea, you know?
赤ちゃんを連れて来ることはあまり良いことではないのだよ、ね?
この言い方の場合は前述の例文よりも少し強く、赤ちゃんをレストランに連れて来ることへのネガティブな気持ちが一層強く表れていることがうかがえます。「ね?」と、やや強引に自分の意見を押し通すような雰囲気を持った言い方ではありますが、これもある程度親しい仲での人たちの間では使われる表現です。
やはり賢い人はあまり使わない方が良い「...you know」
疑問形でもそうでない形でも、いずれにしても文章の終わりに「you know」というフレーズをくっつけるのは好ましいことではありません。
親しい関係の場合は便利かもしれませんが、アメリカの高校などでは発表の際「you know」で文章を終えないように指示する先生が多いです。日本の大学の英語の授業などでもそれを指摘する先生は多いのではないでしょうか。ネイティブのアメリカ人や英語圏の人は日常的によく使うフレーズでも、正式な場では使わない方が好ましいフレーズの一つ、それが「you know」なのです。