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遠回しに物事を言うという意味の「beat around the bush」
欧米の人は日本人のように「やんわり物事を言う」ことや「オブラートに包んで」言うことは好まない傾向は確かにあります。何事もはっきりと白黒はっきりさせ、分かるように言葉で直接コミュニケーションをとることがよしとされていることが基本ではありますが、やはりときにはどうしても話しにくいトピックや言いにくい真実を言うことを避けたり遠回しに言ったりする必要が出てくるシチュエーションも出てくるわけです。これはどの国の人でも向き合わなくてはならない状況です。
アメリカの高校で初めて彼氏ができた際、何となく束縛が鬱陶しく感じた私は、言葉で別れようと言う勇気はなく、彼に察して欲しいという気持ちでわざとそっけない態度を頻繁にとるようになり、SNSでのやりとりもあまり頻繁にやらないようにしました。
さすがに彼にとっても露骨な態度の変化であったので、休み時間に校庭の目立たないところに連れて行かれ、なぜ私の態度が最近急変したのか聞いてきたのでありました。直接「本当は別れたい」と言う勇気がなかった私は最初適当に「なんだか最近やりとりが疲れてきて...」と答えました。フェイスブックでのウォールでは他の友達とは頻繁にやりとりをしていることが彼にも見えていたことは自分でも自覚していました。その状況ももちろん把握していた彼は私にそのときに言ってきた言葉です。
Stop beating around the bush and tell me the truth are you saying you want to break up with me?
遠回しに言おうとしないで本当のことを言ってくれ、僕と別れたいの?
「Beat around the bush」とは直訳すると「茂みの周りを叩く」という意味です。由来は狩りから来ています。昔、鳥など木に隠れている動物の狩りをする際、まずは棒などで木の茂みの周りを大きな音を立てるように叩くことにより隠れている動物たちを刺激して茂みの中から出てくるように仕向けていた、という歴史から来ています。茂みを直接叩くと熊や危険な動物たちが刺激されて攻撃しに来るという危険性があったため、それは避けられていたことでした。
従って、「Beat around the bush」とは、本来ターゲットにされるべきものに直接触れずに物事を進めること、つまり物事を遠回しに言うことです。彼氏に「別れたい」という言葉を使わずに何とか遠回しに二人の関係が好ましくないことを知ってもらうことに私自身は成功したわけですが、意図通りに物事が進んだというホットした気持ちがありながらも、「別れ」という言葉を彼から言わせてしまったという罪悪感も感じた経験でした。
「遠回し」だけではなく「後回し」という意味でも使われる「beat around the bush」
言いにくいことや本来一番言うべき重点を避けることを以外、本来一番やるべきことを避けるという意味でも使われているフレーズです。
I have a test coming up in two days and should have been studying, but I kept beating around the bush yesterday by reading comics.
二日後にはテストがあるので勉強するべきだったのが、勉強の方は後回しにして昨日は漫画を読んでいた。
こういった風に使われる場合、「茂み」の中にある「テスト勉強」はノータッチ状態で、その「周り」に転がっていた漫画を読んでいた、ということになります。ちなみに「後回しにする」の正式な言い方は「procrastinate」です。しかしながら、遠回しに物事を言って最終的に重点を相手に理解してもらう場合とは異なり、やるべきことを後回しにした場合、間接的にやるべきことが少しでも進むということはありません。
がむしゃらに努力して何かをやること、という意味の「beat the bush」
最後に、「beat the bush」のもう一つの意味ですが、狩りを必死にしようとする有様と関係していると言えます。
You won't want to beat the bushes to find a new boyfriend in this high school, you won't have the time to.
この高校では一生懸命彼氏探しをするような高校ではないよ、そんな時間ないからね。
前述の高校時代の彼氏と知り合った高校に入学したばかりの際、先輩に言われた言葉でした。「ガリ勉」と言われている進学校であったその高校では彼氏や彼女を作る人は他の学校より少なく、勉強ばかりに励んでいる生徒が多かったため、言われた言葉です。それにも拘わらず一応彼氏が一度はできた私自身はどちらかと言えば少数派でした。
遠回しに物事を言ったりやるべきことを遠回しに言うという意味で使われる場合、ネガティブな意味で使われますが、「がむしゃらに・一生懸命」という意味で使われる場合はネガティブな意味とは限らず、ポジティブな意味で使われる場合もあります。
昔の狩りの手段から生まれたフレーズ「beat around the bush」ですが、狩るべき獲物たちが「茂み」の中から出て来る場合と出て来ない場合がありますが、出て来るか否かは状況と行動の結果次第、ということになります。