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「Break the ice」=最初に行動に出て議論の口火を切る
アメリカの高校で歴史の授業を受けていたとき、政治について議論する時間がありました。その際、結構敏感な内容のトピックでの議論だったため、なかなか喋り出す生徒がいませんでした。しばらく沈黙が続いた後、ある活発な女子生徒がやっと喋り出し、議論を皆でし始めるきっかけになってくれたのでありました。そのときに先生がその女子生徒にかけた言葉です。
Good for you for breaking the ice, we can finally start the debate now.
議論の口火を切ってくれて助かった、これでやっと議論を始めることができるよ。
この場合、誰も喋り出すことがない中、一人の女子生徒が喋り出したことにより議論の口火を切ってくれたわけです。「Break the ice」とは直訳したら「氷を砕く」という意味になりますが、硬い「氷」を「砕く」ことにより氷のように冷たい空気を少しでも和らげるかのように、最初に行動に出るということです。
このとき感じたことが一つあるのですが、積極的な国民性を持つと言われているアメリカ人でも、ときには敏感なトピックになると慎重になるときもあるのです。オープンに議論するのが好きと言っても、その議論の内容にもよります。オープンでありながらもプライバシーを重視する、といったところでしょうか。
「氷」のように「冷たい」場を和やかにすることでもある「Break the ice」
一方、「口火を切る」といった意味ではなくても、何かをすることにより堅苦しい空気を和やかにするという意味でも使われるフレーズでもあります。
アメリカで仲が良かった友達が新しくできた彼氏を私に紹介してくれようとしたとき、私も友達の彼氏もシャイだったため、一体何を話して良いか分からず、一応共通の繋がりである私の友達とどう知り合ったかという話を、堅苦しい口調で話し合っていました。本当はお互いに話している内容自体は友達から既に聞いていた内容ばかりであったためどうでも良かったのです。しばらく友達の話をし続けた後、私がある日友達と中学のときにクラス内であった恥ずかしい出来事のことを話しました。先生に注意された後の友達の表情を私が真似して見せたとき、硬かった友達の彼氏の表情が一瞬で自然な笑顔になり、噴き出して笑っていました。
Thanks for breaking the ice, _____, you two can finally talk now.
場を和ませてくれてありがとう、(名前)、これで二人ともやっと話せるね。
横で二人のぎこちない様子をしばらく見ていた友達が私にかけてくれた言葉でした。たまたま私の話と表情が友達の彼氏を笑わせて心を開いてくれるきっかけになったことは嬉しかったですし、自分が初対面の二人の距離を少しでも縮めることができたことも少し誇りに思いました。
このように、「最初に行動に出る」と近い意味を持つわけですが、「最初に」という部分よりも場を和ませた行動そのものが「氷」を「砕いた」わけです。氷のように冷たくて堅苦しい場を和ませ、人間関係がスムーズに行くように持っていくこともbreak the iceの意味の一つです。意図的である場合とそうでない場合もあります。
These candies are great ice-breakers for parties; they taste so unique!
このキャンディーは話題のきっかけになるね、味がとてもユニークだ!
「Break the ice」を名詞にして「ice-breaker」にした場合、多くの場合は場を和ませる「人」のことを指します。しかし、物に関して言うこともできます。上の例のように、知らない人同士が集まったパーティーなどでの会話のきっかけになるユニークなキャンディーのことも「ice-breaker」、すなわち「場を和ませ会話のきっかけを作ってくれる存在」のことです。
やはり緊張感を表すのに使われる「氷」、「on thin ice」とは危険な状態のこと
前述の「break the ice」では、どの例でも「氷」とは硬くて冷たい、好ましくない存在として使われていますが、やはり他のフレーズでも氷とはあまり良い状態を表すものに使われていない場合が多いです。
Completing the project without your boss’s approval is walking on thin ice; you better not risk it.
上司の許可なしでそのプロジェクトを進めるのは危険だ、リスクが高すぎる。
この例では「氷」の冷たさより「薄さ」が強調されていますが、薄い氷の上を歩くことの危険性を連想させるようなフレーズです。この場合は氷は気を付けないと簡単に砕けてしまうのでリスクは避けた方が良いという意味が込められていますが、最初の例では冷たい氷を砕いて暖かくするのは良いこと、という意味が込められています。どちらのフレーズでも氷とはあまり良い存在として使われていません。
氷は硬くて冷たく、またときには薄くて危険なため、慎重に向かうべき存在です。そういった考えが表れているフレーズは英語には多数あるのです。