「All in the same boat 」 陥っている状況が皆同じ
アメリカの高校で勉強していた頃、日本の高校二年生に当たる11年生の年が最も授業の数が多い上、内容も難しいものが多くありました。「Honors」と呼ばれる高度なレベルの授業や「AP (Advanced Placement)」といった大学レベルの授業も多く、課題に終われている毎日で、睡眠時間もろくにとれない一年でした。
正に地獄の11年生でしたが、11年生の頑張りで申請する大学からの評価が決まると言われるぐらいでしたので、皆最も勉学に励む時期だと言っても過言ではありませんでした。大学申請のために必要な統一試験もこの時期に受け始める人が多いため、やらなくてはいけないことが最も多い年です。
そんな中、私自身も周りに釣られてということも多少あり複数のhonors やAPの授業を受けながら毎晩宿題が終わらず、朝の三時まで宿題をやっている日々が度々ありました。そんなある日休み時間に仲の良かった同級生に、課題が多すぎて一時間しか寝ていない日もあるということを告白し、睡眠がとれなくて大変だという悩みを話しました。
It’s junior year, we’re all in the same boat; things will get better next year.
11年生だから皆同じ状況だよ、来年はきっとましになるはずだから。
そう友達は答えてくれたのでした。正直な話想像通りの反応でした。あらかじめ高校の説明会のときにも11年生は一般的に大学が最も重視して評価する学年であるためその年に難しい授業をとる学生が多く、統一試験も受け始める学生も多いため忙しくなる、こういうものだと先生方や先輩方から聞いてはいました。
決して自分だけではないといったことも頭では分かっていたはずなのですが、あまりにも厳しい現実と向き合っていたため、もう少し上手くこなしている同級生が周りにいたりするかもしれない、と思ったぐらいでした。しかし実際は皆同じような状況だったのです。
「We’re all in the same boat」とは直訳したら「私たちは皆同じ船の中にいる」という意味になりますが、同じ船に乗っているからこそ波に打たれたりしたら揺れを感じて不安になり、沈んだりしたら同じように皆で沈んでしまう、皆同じ環境の中で同じ状況と向き合っている、ということを意味します。そして大抵の場合はあまり好ましくない状態に皆いる際に使われる表現です。
また、置かれている「状況」と言っても前述の状況の場合は自ら選んだ状況であり、後天的な要素により苦労と向き合っている状態です。同じ11年生のとき、車椅子でいつも移動していた同級生の女子生徒がいましたが、彼女は脳性麻痺でした。話によると小学校のときには彼女のように身体が不自由な生徒や障害がある生徒専用のケアがあった学校に通っていたため、身体の状況のことを考えたら自分と同じような苦労をしている人たちと勉強できたという意味では環境に恵まれていたそうです。
It was nice to be able to study with people in the same boat as me.
自分と同じ状況の人たちと一緒に勉強できたのは良かった。
その女子生徒がある日ぽろっと発したことがあった言葉でした。ときどき彼女の身体や状況に理解がないクラスメイトがいたりすると、彼女のように何らかの障害を抱えている生徒ばかりが集まった学校で勉強できた小学校時代はある意味良かった、と思うことがあると話してくれました。
彼女のように生まれたときから「同じ船」に乗っている人たちがいるのだということにその言葉で気づきました。ときには自らの選択からではなく運命により乗らなくてはならない船が最初から決まっている場合も存在するということを彼女から知りました。
「Rock the boat」船を揺らして余計なトラブルを招く
やはり複数の人たちが乗っているであろう船が陥る状況は、乗客全てに影響を及ぼしてしまうため、安全運転が無難なものです。前述のように、同じ運命や状況を共用する意味の「in the same boat」の他にも船が出てくるフレーズは多々ありますが、その中で常用される中の一つが「rock the boat」です。
My mom forgot about me forgetting to do my homework; don’t rock the boat by mentioning it to her again.
母親は私が宿題をやり忘れたことを忘れているのだから、わざわざそのことを話して余計な揉め事を起こさないで。
友達が宿題をやり忘れてお母さんに酷く怒られた後に友達の家に遊びに行ったときに言われた言葉でした。「Rock the boat」とは直訳すると「船を揺らす」という意味であり、余計な行動をすることにより波風を立てるという意味です。この場合、仮に私が友達のお母さんに友達が宿題をやり忘れたことを話題にしたとしたら、同じ「船」に乗っている友達とお母さんに歓迎されないトラブルを引き起こすことになったのです。もちろん黙っていました。
船は水の上を移動するため、何かがきっかけで簡単に危険で不安定な状況に陥ることがあります。そのため、乗っている乗客の運命を好ましくない方向へ持っていく原因となる行動をとらないことが重要となってきます。英語では何かと危険や好ましくない状況に関するフレーズで頻繁に登場することがある「船」です。